2017年8月17日木曜日

句会報 第24回

今回はいよいよ、出雲地方で唯一出会えた自由律俳人、星野光範さんを特集してみようと思う。

やっと、それを実行するための気力が備わったところである。

星野さんと私が出会えたのは、とある島根県内の某店舗であり、
お店のマスターが自由律俳句のイベントを企画してくれたおかげで、知り合う事ができた。マスターにも感謝。

年齢は、私よりやや年上だが、ほぼ同年代と言ってもよい。

早速ではあるが、その句の特徴については、「ミステリー」の一言につきると思う。
句の全体が、ミステリー、謎を追求する事に終始している俳人。

かなり個性的な人物と思われる。

さあ、星野光範氏を紹介せよ!




●一番最初に目に止まった句

星野さんが過去に今まで詠んだという句を、出会ったその日に預かり、個人的にコピーして手元に資料として入手をする事ができたのだが、その中でも、一番最初にインパクトを感じたのが、

・皆正しいから蛇の舌はちろちろ割れる

である。

現在お仕事で、褌のデザインを作成しておられるという光範氏。

そして、この蛇の舌の形について着眼している感性は、
どうにも、読んだ読者の目が点になる感覚に襲われる。
我々は、哺乳類だが、哺乳類が正しいと思っていることを、
ヘビという種族の生き物に、見透かされてしまって、
すっかり、手玉にとられてしまっているのではないか?という心境に襲われる。

蛇の舌が割れている不思議、なぜ、舌が割れているのか?

その舌は、我々の事をどう思っているのか?その舌で、一体何を述べるつもりなのか?

本人にこの句がよかった事を告げると、「斜に構えた目線」であると、自覚しているのだという。
この句もそうだが、たしかに、星野さんの句は、物事を斜めからとらえた句が多い事に気づかされる。

150句ばかりいただいた原稿の中から、個人的に気になった物を列挙してみよう。

・おばはんが食べて糞して屁をこいておならも鳴らす米国人
・自由とはもっと自由なはずなのに皆クロールで自由形やる
・にっこりと花を摘んでわたしはやはり人間嫌いなのです
・使い切れない鉛筆、命に等しい
・気高く美しいことがなぜオオイヌノフグリなのだろう
・夕空にこうもりの群れ、秩序ある無軌道
・一度も嗤われたことがない胡蝶蘭
・冷凍マグロのようにゴム長で蹴飛ばされる
・風吹けば桶屋が儲かるその続きの話知りたい
・ハンカチ持たない男子の正義
・うまかったけど血の味がした
・散々な目に遭ったよとうれしそうな顔
・いつも通りという窮地
・何をやっても面白くないという平和
・誰にとって安全日
・これはペンですと何度も絶叫すれば通じる
・蠅は一週間も私の部屋で何がしたいのだろう
・西瓜をノックして誰もいないことを確認
・あなたはいつか必ず死ぬでしょうと真剣な占い師
・ぼくはゴッホより幸せでありたい
・予告編がピーク
・桃をむさぼる
・夭折は命尽きただけのこと
・平和記念公園で生まれて初めてホームレスを見たのを思い出す
・ジャングルジムの奥にはもう入れない
・ビートルズを全部手放す
・みみずをつまんで英雄
・おネエはすぐ泣く
・ぜんぶ覚えてる
・奥にはだいたい何もない
・幸せと不幸が表裏ならばモグラ叩きの数が合わない
・きんたまを舐める仔猫の愛らしさ天使はだいたい両性具有
・墓の下には仮面
・あばら骨の数だけ無念
・それよりも巻き爪が痛い

トンネルのように奥までずっと続く、謎、謎、謎の連続であると言える。

一貫して、孤独を感じさせる句が多い。

多数派ではなくて、少数派の意見に立つことが多く、それゆえに、何事に対しても考えすぎてしまう立場に立たされる。

星野さんの悩みは、考えないですむ人たちと一緒に居る時に感じる、不条理な疑問を、口に出して言う訳にはいかない状況に立たされている為に、そのモヤモヤが消化不良として体内にずっと残っていた。

そのモヤモヤを述べる一つの手段が、句であるように思われる。
冷徹な出来事について述べている句が多い。

「冷徹」を辞書で引くと、「冷徹」とは、
感傷的にならず、冷静に、物事の根本までを鋭く見抜いている様、とある。
うーん、そのとおり。

特に

・冷凍マグロのようにゴム長で蹴飛ばされる
・誰にとって安全日

など、
星野さんの句には、一貫して冷徹な厳しさがある。

安易に心地よい環境に身をおかず、現実として、最終的にそうなるのではないかという、物事の根源的な部分を見つめようとしている姿勢が見受けられる。

二人でその後、鍋パーティーを開催したところ、

・句会ならではの残尿感   祖啓

という句が詠めた。

これは、お互いが多弁ではなく、無口な性格が募って、そのような空気感が発生した。

星野氏はビールがお好きなようだ。
また、最終的にこの日の思い出は、

・褌の龍   祖啓

という一句になった。

星野さんは、褌のデザインに龍を起用しようとしていた。

常に考え続け、深刻に悩んでいく姿勢が多い星野さんだが、

・桃をむさぼる
・予告編がピーク

などは、完結に人間の本能、衝動をとらえた、極めてシンプルな句であると言える。

星野さんの句にはどちらかというと、人間、動物、社会といった出来事が多いのも特徴であると思う。

セピア色な色調で、それらが淡々と描写されていく。

せっかく出会えた、島根県内の自由律俳人と、今後は、バーベキューや花火大会など開催すべきか?微妙に悩んでいるこの頃ではあるが、ひとまずは、今回の原稿を終わらせていただく。

※原稿を掲載するにあたって、再度、星野さんと呑みに行き、謎の親交が深まった。
居酒屋で酒を呑み、最後には、エビの天ぷらを割り箸でつまみあげ、
空中で踊らせたあと、しばし沈黙し、迷ったあげく、最後にはそのエビを食べたという噂である。            おわり

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